川内倫子写真展「The rain of blessing」

The rain of blessing
Rinko Kawauchi
Gallery 916
会期 : 5月20日金曜日 – 9月25日日曜日
開館時間 : 平日 11:00 – 20:00 / 土日・祝日 11:00 – 18:30
定休 : 月曜日(祝日を除く)
入場料 : 一般 800円、大学生・シニア(60歳以上) 500円
高校生 300円、中学生以下無料(Gallery916及び916small)
http://gallery916.com/exhibition/therainofblessing/

約600平米ものスペースを活用した写真ギャラリー。
すぐ近くでは東京湾が望める。建物の6階が会場である「Gallery 916」

本展は、過去作品から最新作まで、
四つのシリーズで構成されている大規模な個展。

結論から述べると、とても良かった。
この季節、この会場に適切な作品群だった。

私の頭の中に色濃く残っていた「うたたね」や「花火」のイメージが、
ほどよく溶解し、新たな構造により再度立ち上がったと言えばよいのか。

その頃(以前)、私が同氏の作品に対して抱く感情•キーワードは、
安直だけど、生と死、発生と終結、時間、有限、あたりだった。
彼女が撮る写真の多くは、事象における何らかのピークを捉えているように思えていた。しかしそれは物理的なピーク値ではなく、人間だからこそ捉えて、見出せることができるものがほとんどだった。

つまり主観であり、人類全体における普遍的なピークとは呼べない。
しかし、ことごとく私の思考回路(感情)に訴えかける上での有効範囲におさまっていた。

それは「今」はこうだけど、「いつかは」こうならない。
それは「今」はこうだから、「いつかは」ああなるよ。

一場面を切り取る写真というメディアだからこそ、
長時間露光したって、一場面に、一枚に圧縮されてしまう。
写真というフォーマットにこだわる以上、
それが弱さで、それが強さである。

その先を見据えて、または意識しているからこそ想像できる、今。
生まれた瞬間は死に一番近くて、初まりに近くて、
生きつづけることは再び死に近づくことで、初まりから遠ざかること。

肉体を持って生まれてしまったからこそ、
いつか死に至るという運命のただ中にある私たち。
このあたりは、国境を超えて、人類全体にも通ずる、少なくとも今は普遍と呼べる、共通の思考回路を持っているのではないかと。

もちろん、死の捉え方は思想や環境によっても大きくかわってしまうけど。
死という状態はやがて平等に訪れる、道理である。

そんなネガティブに扱われやすいテーマをどう処理するか?
私は、同氏は撮影を通じて、事象をエネルギーに変換をしているように見える。

泳ぐ、ブランコをこぐ、息継ぎ。
それらを実行する上でどれだけのエネルギーを消費しているか?
ご飯を食べるなどして得たエネルギーを、どのような行為に消費しているか?

生きる行為とは、上記の通り、エネルギーの獲得と消費の繰り返しである。
考える余裕を手に入れた私たちが、獲得した貴重なエネルギーを、次のエネルギー獲得以外に消費することになって、どれだけの年数が経過したのだろうか。
食べることが、安全を守ることが以前と比較して、楽になった結果、
私たちは何を求めて、何にエネルギーを消化するようになっただろうか。

働かずとも食べられる、生きられるような社会が完全に構築されたとき、
私たちはエネルギーの矛先をどの方角へ向けるだろうか。


だから、同氏の作品が捉えた情景を豊かであると感じるのかもしれない。
生きることに直結した行為以外にファインダーが向けられているから。
だから、今こそ活きる写真なのかもしれない。

長々と書いてしまったけど、ここまでが過去のイメージ。

新作は、モチーフを人類(生命体)から距離をとって、
より冷静に事物を見つめようとする姿勢が伺えた。
鑑賞している自分が先ほどとはうってかわり、
脳内が言葉での思考をやめてしまった。

より、言葉には置き換えにくい対象を見つめていると思った。
ひとつの展示会場内で、この変化。
だから面白いと感じたのかもしれない。

新作に関して、最後に言葉を残すなら、
人間がいなければ、不思議なことなどなにもない。

良い写真でした。

また、小さなプリントは20万円〜というお手頃な価格だったので、
あれが欲しい!と思ってぱらぱらリストをめくっていたのだけど、
既に買い手がついてしまっていたのか、掲載されておらず。

プライスリストがとても見やすく整理されていて、
こういう仕事がしっかりしていると、安心するし、何故か嬉しくなる。

最後に受付のお姉さん方が気持ちよく挨拶して下さった。
また来たいなと思う、良いギャラリーでした。

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